美容医療 プロレス論
身バレしたくないので、匿名で愚痴を書いていく
美容外科医、美容皮膚科を目指す人たちへ
美容医療というのはプロレスと同じだ
楽しいプロレス、王道プロレス、邪道プロレス、格闘プロレスなどかつてはいろいろジャンルがあったが美容医療というのはそれに近い
内科の先生が皮膚科や形成外科の知識もほとんどなしにやっているおちゃらけ路線の美容医療
大学で皮膚科や形成外科の専門医を取りバリバリやっている先生がする本物路線の美容医療
宣伝や広告を派手にうって、広告費だけで売り上げの40%みたいな自爆路線の美容医療
しかしどの美容医療もお客さんからみるとほとんど差がないのだ
肝心なのはいかにお客さんを魅了するかということ
ジャイアント馬場、アントニオ猪木、天龍、長州、前田、大仁田、三沢(レスラーがちょっと古いな)など、いまでも名前を残しているレスラーはお客さんを本当に魅了した
強いとか弱いとかいう尺度はレスラーの魅力の1つでしかない
美容も同様で治療の効果だけではなく、いかに人を引き付けられるかということが重要なことなのだ
私の同僚だった医師は内科でほとんど美容の知識がないまま美容の世界に入った
現在は昔に比べれば知識・技術は増えたが、専門でやっていた私から見るとそんなことも知らないでやってるのかということも多い
しかし、お客さんを引き付ける力があり、連日満員御礼のクリニックを開いている(彼女を見ていると全盛期の大仁田厚のカリスマ性を思わせる)
美容医療にはトーニングやHIFU、美容点滴などほとんど意味のない治療も多いが、<本当に痛い時に全然痛くない表情をしなければいけない>といったジャイアント馬場のようにいかに効いていない治療を効いていると錯覚させるのが繁盛店のコツだ
一見詐欺まがいにみえるが、それは大丈夫だ
詐欺まがいの医療で金儲けをしている医師たちが必死に効果のない治療を効果があると思わせるような論文を多発しているから、一応裏付けがありますと言えてしまう
<僕にとってプロレスとはって言われたって、『商売です』としか言いようがない>といったジャイアント馬場の言葉をかみしめよう
「人をきれいにすることは素敵なことです」とホームページに載せている医師の腹の中は『商売です』だ
プロレスはショーである
美容医療はショーである
とはいえ、一般の人と比べてプロレスラーが弱いかと言われれば、それは違うと言える
あれほど肉体を鍛え上げ、レスリングなどの格闘技をしてきた人間が弱いわけないのだ
美容医療をしているのは医師である
医師も一般人と比較すれば医療に関しては知識が段違いに違う
さらに専門の医師と専門ではない医師を比較すれば、知識はさらにけた違いに違う
(内科と外科の医師を比較しても意味がない 柔道と空手を戦わせても意味がないように)
武藤が<真剣勝負など柔道の時にさんざんやった。プロレスはそれを超えるものだ>と言っていたと思う(この引用はちょっと嘘かも)
真剣勝負であれば勝ち負けがはっきりする 通常の医療は病気が治る治らないではっきりしているように・・・
美容医療というのは通常の医療を超えたところにある
もちろん、治療の内容で勝負することは悪いことではない
しかし美容医療というのはそれだけが判断の基準ではないのだ
これから美容に進もうとする方はどんなタイプになりたいかではなく、なれるかを考えて進んだ方が良いと思う
やりたいことよりもやれることを大切にすることが重要だ
ただし<派手に見えれば見えるほど、裏で地味な努力をしているのがあらゆる世界のプロだ>といったアントニオ猪木の言葉は覚えておくように
脱毛について
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現状ある脱毛は
アレキサンドライトレーザー
ダイオードレーザー(+蓄熱)
ヤグレーザー
光脱毛
針脱毛などが一般的である。
どれも基本的には熱の力で毛母細胞を破壊して、生えてこないようにするというもの
針脱毛以外の脱毛は毛周期(毛が生えたり抜けたりするサイクル)に左右される。
レーザー脱毛の個人的な感想としては
アレキサンドライトレーザーが一番強く、ヤグレーザーが弱めでダイオードレーザーは中間位という感じ
ただしアレキサンドライトレーザーは毛嚢炎などの副作用もわりと多めなので注意
光脱毛はエステの機械は効きはあまりよくはないが抜けないわけでもない、医療用の光脱毛はそれなりに抜けるがやけどがアレキよりも多い
ダイオードレーザーは最近は滑らすタイプが主流だが、昔は一発一発当てていた。
昔のタイプの方が効く感じはするが痛さはハンパなく痛いのである程度抜けるのであれば滑らすタイプでもよいと思う。
ちなみに蓄熱はあまり意味ないと個人的には思う。
蓄熱だけでバルジなり毛母細胞を破壊できるのであれば毛周期関係なく脱毛されるはずだ、けれども実際には生えている毛にしか効果はないので結局、蓄熱式レーザーというのはレーザーの力で脱毛しているだけだと思われる。
→これ訂正 硬毛化という現象がある これは原因ははっきりしないのだが、毛包やバルジに刺激を与えてしまい硬い毛が生えてしまう現象だ
昔は弱いパワーでの照射が硬毛化を引き起こすといわれていたがエステの機械では硬毛化は少ないらしい(エステのは硬毛化より抜けないクレームが多い)
ということは逆に強すぎる出力が硬毛化を引き起こしているのではないかというのがひとつの見解となっている
アレキサンドライトレーザーは毛のポップアップ(照射時に毛が飛び出てくる現象)が認められるが、これは毛母細胞なりバルジなりに熱を与える前に毛が抜けてしまってしまい、さらにその際に中途半端な熱が余計な刺激を与えて硬毛化を引き起こしてしまっているのではないかといわれている
では硬毛化時の対応だが
1 硬毛化した毛は毛周期で生え変わる際に元の毛に戻ることが多いのでそれまで待つ
2 レーザーの種類を変える ヤグレーザーが良いといわれているが、蓄熱も通常の倍以上に重ねて熱を入れることで硬毛化に対応できるのではないかと個人的には思う
3 針脱毛・・・
→ここまで訂正
医療用の針脱毛(エステのはダメ)は確実に毛母細胞をつぶしていけるのでもっとも脱毛効果は高いが、時間と手間と一回に抜ける範囲などの効果がレーザーに比べると比べ物にならないくらい小さいのでレーザーでほとんど抜けて残り1本、2本のところでするのが効果的である。医療用の針脱毛の技術はかなりすたれてきていてちゃんとできる医者が少なくなっているので探すのは大変だと思う。
脱毛の機械はよくどれがよいですか?と聞かれるが、どれでもよいと思う
中国製の安い機械でもキャンデラの高価な機械でも一度に抜ける量に差はかなりあるが、抜けないわけではない
たぶんエステの機械でさえ回数さえかければそのうち抜けると思う…たぶん
脱毛は個人的にはあまり好きではない
というのは脱毛は看護師さんが照射するところがほとんどであるが、結構な重労働で看護師さんを消耗品のように扱わざるをえないクリニックが多い。
なのでうちのクリニックには脱毛の機械は入れていないのである。
白玉点滴について
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白玉点滴、相変わらず人気ですね
白玉点滴はグルタチオンの点滴になります。
グルタチオンはもともとは薬物中毒(有機リン系の中毒 サリンとかね 金属中毒)に使用されるお薬です。ちなみに覚せい剤中毒にこの点滴をする人がいますが、薬理学的にはどうなんでしょうか。
後は肝臓保護や妊娠高血圧、角膜障害の改善などが挙げられます。
美容では効果の一つに黒皮症や肝斑、炎症性の色素沈着への改善がうたわれているためそれを目的としてすることが多いです。
ちなみにグルタチオンのメラニン生成阻害作用はin vitroでの効果しか確認されていません。in vitroとはWikipediaによると実験条件が人為的にコントロールされた環境であることを意味しています。要は人体では確認されていませんっていうことです。ちなみに人体への肝斑などへの効果は添付文書によると60%弱の効果があるといわれていますが、ビタミンCなどのメラニン生成阻害作用が90%以上であることを考えると微妙な気がします。
グルタチオンは100~200mgを生理食塩水に溶解し静注するように書かれていますが、美容では1000~2000㎎を溶解し注射なり点滴なりしていることが多いです。
注射も点滴も濃度の問題だけの話でどちらが効くなどということはありません。
グルタチオンは血管痛がでるような薬剤でもないので私は注射で充分だと思います。
効果については正直よくわかりません。
この点滴なり注射なりを200人以上にしていますが、劇的に変わった人はいません。
またよく聞かれるのが白くなりますか?という質問ですがもともとの肌の色よりも白くなることはありません。
(白玉点滴で検索するとビヨンセの写真がでてきますが、あれは加工だと思います。)
ちなみにグルタチオンには内服薬(タチオン錠)もありますが、こちらは皮膚症状に対する効果はないようです。添付文書に書いてあります。
(グルタチオン、タチオンともに注射薬は肝斑や炎症性色素沈着の効果はうたわれていますが、内服に関しては肝斑や色素沈着への効果が削除されています)
最後に、私が一般病院にいたときに慢性肝疾患の方が毎日グルタチオン注射してたけど白くなっている感じは全くありませんでしたというのをお伝えしておきます。
ほくろのレーザー治療について
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ほくろの治療は保険治療ではメスでの摘出しか選択がない
この治療は医者のミスもしくは悪性のほくろでない限り再発することはない
自費診療では教科書的には炭酸ガスレーザーを照射して色が見えなくなるくらいまで照射し、削ってしまうというのが第一選択である。(炭酸ガスレーザーでの治療の再発率は30%くらい(私的感想))
もしくはQスイッチルビーレーザーなり、Qスイッチヤグレーザー(ネオジム エルビニウム)なりを照射して黒い部分を反応させシミと同じ原理で取ってしまう方法。ちなみに炭酸ガスレーザーと違い、これは数か月おきに数回照射することが前提だ。
(Qスイッチでのとれる確率は大体50%くらい 再発率は50%くらいだ。)
痕の残りやすさは炭酸ガスレーザー>メス>Qスイッチかな
炭酸ガスレーザーの赤みはどうしようもなく残ってしまう人がいる。結局赤いところをくりぬいて縫合してみた方がきれいになることもよくある。
Qスイッチは後は残らないがほくろがとれない可能性もあり、効果が大きいものはそれだけ、副作用も大きいこととなっている。
大きいほくろ(2㎝以上)はメスでの切除をお勧めする。理由としてはあまり大きいほくろはごくまれに悪性の可能性があり、病理検査(顕微鏡の検査)をした方がよいからだ。
小さいほくろはどれでもよいと思う。切ってもよし、炭酸ガスレーザーで焼くのもよし、Qスイッチで数回照射するのもよし。
私のような形成外科医としてはメスで切りたいですけどね
トーニングは本当に効果があるのか?
身バレしたくないので、匿名で愚痴を書いていく
トーニングはこの5年くらいで確実にメジャーになってきた治療法だ
肝斑の治療法なのだが、ヤグレーザーを低出力でデフォーカス(焦点をずらして)で繰り返し照射することで肝斑を治療するというもの
15年くらい前まで肝斑にレーザー治療はご法度であった。(2018年3月に改訂されたあたらしい皮膚科第3版(個人的には良著)でも肝斑にレーザー療法は禁忌となっている)
実際、以前に私もどうしてもと頼まれてQスイッチを肝斑に照射したことがあるが、1か月くらいはきれいに取れた状態が続くのだが、その後元の色よりも濃くなってしまったことがある。なので私は肝斑にはレーザーを照射したくない派だ。(某先生のように熱狂的なトーニング否定派ではない)
そもそも肝斑とはなにかというお話なのだが肝斑の原因はよくわかっていない
一つには女性ホルモンや副腎資質ホルモンの分泌変化の影響でメラニンを作る細胞が刺激されて色素沈着ができるという理由
もう一つは肝斑が頬骨上にできやすいことから骨上の刺激はよりほかの場所よりも強くかかるため、洗顔や化粧の刺激によるものもしくは紫外線などによる色素沈着という理由
この辺りが原因ではないか言われている。
(もちろん反論はある 女性ホルモンの影響なら男性の肝斑を説明しづらいし、刺激による色素沈着ならおでこやあごの骨の上にはなぜできないのか)
女性ホルモンの影響であるならばメラノサイトを破壊するようなレーザー治療は有効であると思う(むしろ通常出力の方が効くのではないか)
ただし刺激性の色素沈着は炎症性の色素沈着と似たようなものなのでさらに炎症を起こすようなレーザーはあまりよろしくないのではないかと思う。
で本題に返り、トーニングだ。
肝斑の原因はよくわかっていないが、上記の二つが原因とするならば全く違う病態の治療に同じ治療を施していて、改善したり、悪化したりする。要するにこれが肯定派と否定派を生み出しているのではないかと思う。
そして一番、問題なのは医者の診断だ。
肝斑を肝斑と診断できる医者は少ない そもそもよく原因がわかっていない病気を診断しろというのが無理なのだが、なんだかよくわからない頬骨上のしみを肝斑としてしまう医者は皮膚科の専門医にも多いのだ。(肝斑内服セットを売るために(笑))ましてなんとなく美容をやっている医者なんかにはとうてい無理だ。私も自信をもってこれが肝斑なんて言うことはほとんどない
肝斑かもしれないねなんて医者は言うけど、そうしか言いようがないのだ。
そしてこの人の肝斑には効くけど、こっちの人には効かないね、なんてことを言っておしまいなのだ
最後にトーニングについて私が懐疑的に思う理由を述べてみる
・ほとんどのクリニックがそうであると思うが、肝斑の治療としてレーザーを照射するのは理解できる(ポリシーをもってするのであれば…)ではなぜ肝斑以外の額とかあごなどの全顔に照射する必要があるのだろう よけいな刺激はシミを増やすだけだ。IPLのようなコラーゲン産生促進作用のような付加的な作用はヤグレーザーにはない
・レーザーというものは厳密なもので、ちょっとでも位相をずらせばまったく意味のないレーザーポインターのようなものだ。(だって1064ナノメートルですぜ)トーニングの照射方法として通常の焦点距離よりも2㎝以内離して照射するのだが、焦点距離を2cmずらすのとずらさないのではエネルギーが全く違う。(ちなみにある距離までは離した方がエネルギーは強くなる)焦点距離の問題をどう考えているか?
最近、権利が移動したからJ-MECもQスイッチヤグレーザーあんまり一押しじゃないね
今はウルセラとサーマクールの宣伝がすごい(笑)
美容医療の原価を考える
身バレしたくないので、匿名で愚痴を書いていく
以前も書いたが、美容医療のぼったくり度としての指標となる卸値を載せておく
ラエンネック 1アンプル 大体180円くらい
(注射のシリンジや針は合わせて10円くらい)
ボトックスビスタ アラガン社 日本代理店正規品 50単位 1バイアル 17000円
ジュビダームビスタ ウルトラXC 日本代理店正規品 2本で1箱 35000円
(もちろんこれは最小ロットで買ったときでたくさん50本とか購入すればボリュームディスカウントでボトックスは1バイアル 14400円 ジュビダームは2本で31000円まで下がる(1本(1cc) 15000円くらい))
海外製のボトックスやテオシアールなどの輸入物はこれの大体50%から80%くらいで購入できる ただし輸入物は輸送費が1万円くらいかかるので少量だと足が出る
原価に上乗せされる手技料、人件費、場所代、儲けなどが上記に上乗せされてそのクリニックの価格となるのである。
新宿や渋谷でやっているクリニックと地方の片田舎でやっているクリニックとでは原価以外の料金が変わってくるのは当たり前であるが、高いですな
来院される前に一度計算を(笑)
興味があった先生について
身バレしたくないので、匿名で愚痴を書いていく
以前、非常に興味があり一度来院してみたい医院があった。
今となっては閉院しているのでホームページなども魚拓で調べるしかないのだが高田馬場ある皮膚科だ。
この先生は電気回路の造詣が深く、自作のレーザー機器や中古品のアップグレードなどを自分でしてしまうような先生だったらしい。
(風貌もback to the futureのクリストファーロイドのような風貌だったようだ ちなみに魚拓でしらべたところ興味のないものに自分の容姿を挙げている)
そして良心的な値段で治療を行っていたようなので患者さんから非常に評判がよかったようである。
自分が美容医療に携わっているとむなしくなることはよくある。医師としてもっと必要とされる現場、救急医療や外科ではまだまだ人手は足りていない 美容医療はどうでもいいとは言わないが、二の次の医療だ。
高須先生が美容医療は幸福医療と呼んでいたが、生きていればこその幸福医療で死んでしまっては意味がない。そういう生死の現場に自分が進まなかったことを後悔してしまうときはある。
また美容医療についても美容医療に進む医師たちが全員悪いわけではないのだが、お金目的で困っている人から詐欺同然の治療を行っているようなクリニックも多く、そういうクリニックと同じに見られてしまうのも悲しいのだ(クリニックの母体となっている会社や融資元の方針で金儲けの方向に圧力をかけられる医師も多い)
たしかにクリニックの経営にはお金がかかるのは確かだ。勤務医の給料では払えないような額のお金が人件費、家賃、仕入れ代などなどのお金に消えていく。
だからといって詐欺同然の治療をしてよいわけではない
高田馬場の先生はそのコストを自分でのメンテナンス、従業員を雇わないなどの方針で解決していたようだ。(注射のアンプルを針、シリンジとともに販売するのはどうかと思うが…)
そして安価で良質な美容医療を提供していた。
私にはそんな知識も技術も持ち合わせていないが、せめてその心意気だけでも持ち合わせていたいと思っている。